思うままにつづる

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※当ブログは個人の見解であり、所属組織とは関係なく、効果効能を保証するものではありません

組織の情報の非対称性と向き合う

情報の非対称性とは、経済学などで「提供側」と「受給側」との情報の差異がある状態を指す。この状態になると全体の総和としての満足度を下げることになり、市場全体としての失敗を生む可能性を高めるとされている。その意味で情報の非対称性を解消することが求められる。

経済ではないが、組織内での情報の非対称性の解消も重要だ。組織において情報の非対称性とは、役員レベル、マネージャレベル、社員レベルといった階層ごとの差異を多くの場合指す。しかしながら、立場上同じ階層に属していても、運営部門と開発部門では持っている情報に差異があるし、同階層内の横の情報の非対称性も存在している。また、勘違いしてはいけないが、いわゆる組織上下部に位置する階層の方が持っている情報が必ず少ないとは限らない。これらの情報の非対称性の解消を重視する理由は、お互いに持ち得ていない情報があることによる意思決定のズレや非効率さ、さらには組織が市場の変化に対応できなくなるなど、単なる現場の問題にとどまらなくなることもある点だ。

組織内で情報の非対称性をどう解消するか考えよう。考えなければならないのは、目的と手段だ。一般的に目的は情報を完全に対称にすることではなく、情報の非対称性を小さくすることで、意思決定の統一や効率化を進め、ビジネスプロセスを改善して、全体の利益を上昇させることだ。目的を見誤り、間違った手段を取ろうとすると、情報の非対称性の問題を解決できないだけでなく、他の問題も露呈する場合があるので注意が必要だ。

もっとも簡単に考えつく手段は、全ての情報をオープン化することだ。しかしこれは現実的でなく、また良い方法とも言えない。ビジネスにおいて組織全体に情報を開示できないことは多々あるし、法令上オープンにできないこともある。もちろん組織内に完全に留めることができるのなら良いが、多数のメンバーにオープンにする危険性は常に付きまとう。また、ただ単に全てをオープンにしたとしても非対称性が解決するわけではない。組織内にある多くの些細な情報はほとんどのメンバーには不要であり、むしろ他の重要な情報に割く時間を浪費し、次に与えられる情報を軽視する結果となる。これは目的から外れ、情報の対称性を完全に解決することに向かってしまっており、手軽な銀の弾丸を求めた結果だ。

情報の共有は相互的なもので、必要に応じて情報をオープンにすることは重要だ。だが、全てではない。情報の非対称性を小さくするためには、相互の情報共有を行っていく必要がある。この問題になると、よく「部下が情報をくれない」であったり「上司が情報をおろしてくれない」、「チームメンバーが情報を共有してくれない」といった問題提起があるのだが、情報共有は必要なものを一方的に共有することだけではない。情報を共有できる環境を構築していくことも必要なのだ。上司やリーダーに当たる人間は普段から問題がないかや現状の内容を聞きに行き、「自ら」情報を収集すること、そして必要な情報共有がなされているかを確認する。一方で部下は上司や他のメンバーが適切な情報を収集できているかを自らの状況を簡単にでも毎日共有するのだ。その意味でデイリースクラムのような朝会や夕会は1つの解決策だ。また、スクラムにおけるスプリントを短期間化することも良い方法と思われる。単なる能動的でない、受動的な共有する場を、小さく短いスパンで、全員で作っていくことが重要なのだ。

また情報を共有する上でお互いが目指すこと、求めていることを共有し合うことが重要だ。お互いが想像上の必要な情報を提供し合うのではなく、何が必要と考えているか、そしてなぜ共有するのかを伝えるベースとなる情報になるからだ。これにはドラッカー風エクササイズ*1*2や星取表*3などが役に立つ。KPTなどの振り返りなども良いのだが、KPTなどは情報が基本的になにか事実が起きた後になりやすく、前に対応する事ができないため、このような事前・事後両面で対応できるようにチームとして進めることで単なる自己中心的な想像ではなく、実態を伴った必要な情報の共有をすることができる。

最後にもう一つ大事なことがある。それは相互の信頼だ。そこで重要になるのが心理的安全だ。心理的安全の詳細については他サイトの説明*4に譲るが、信頼関係がなければ、問題を共有できなかったり、また必要な情報を共有しあうことができなくなってしまう。当たり前だが、発言の機会を不均一にするなどはもっての外だ。組織的にそのような土壌を作り上げると同時に、そのような組織化を推進できるような言動が各メンバーに求められるのだ。

情報共有がうまくいかないときは、相手を知り、組織的に取り組み、そして自ら解決できる言動を心がけることを忘れてはいけない。